『水天のうつろい』特装箱

このほど、詩集「水天のうつろい」の装幀を手がけてくださったグラフィックデザイナーの長澤昌彦さんが、下記のコンセプトのもと詩集の特装箱を制作してくださいました!コンセプトも含めてご紹介いたします。なお、この特装箱は版元のらんか社で発売もされております。ご興味のある方はらんか社へご連絡ください。→らんか社

 

時のドッグイア
詩集『水天のうつろい』特装箱
 私が装幀をした『水天のうつろい』は、著者の岡田ユアンが自身の子供をうみ出す前後の時間を綴った詩集である。「水天」は仏教における水の神様で、日本では安産・子授けの神様として知られている。詩集の表紙は、永遠の時を持つ宇宙に一筋の水が流れ新たな時間が始まることを示唆している。ファインペーパー い織りの静かな和のテクスチャーが、ブロンズインクで刷られた水面に浮かび上がり、スモークホワイトの偏りのないニュートラルな色調が空間を際立たせる。新しくうみ出された言葉たちを、フランス装に想を得た繊細な造本で包んだ。
 特装箱もまた永遠の時を持つ宇宙と考え、全て詩集と同じファインペーパー い織りで包んだ。矩形の右上角を折り曲げたドッグイアのシルエットを持つ箱、中には永遠の宇宙を折り込んだ時間、その時代の母子の時間が収められている。私たちはこの箱を「時のドッグイア」と呼んだ。
 フタには金箔の星が一つ輝き、フタを開けると同じ位置に変わらず存在する星が、流れる水面にも映り込む。詩集を取り出したミの底面にも、同じ位置に星が存在している。この星はNISSHAさんのインクジェット印刷で詩集表紙のオフセット特色印刷の刷り色に合わせてもらった。
 ドッグイアの形状は、収めた詩集を左側に固定させ、背表紙側の空間から詩集を取り出すことを自然に促す。ミを底上げすることで詩集の表面はミの高さと美しく揃い、またミの重量も増して安定感が生まれた。箱を置いたまま繊細な詩集を取り出すことのできるアフォーダンスが存在している。

 

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